業務経験がない業種で開業しても創業融資が借りられた事例


日本政策金融公庫の創業融資の審査にあたっては、4つのポイントがあります。

それは、

1.自己資金
2.創業者の経験
3.事業計画書
4.余裕資金

になります。

そのうちの一つ、「創業者の経験」についてお伝えします。

創業者が創業資金を借りようとする場合の申し込み先は、ほとんどが、日本政策金融公庫の新創業融資になります。

ところで、日本政策金融公庫では「創業者の経験」を特に重要視しています。

日本政策金融公庫は、日本で一番創業融資を行っている金融機関なのですが、これまでの創業融資の貸付の結果から、どのような創業者が成功するのか、という情報を大量に持っています。

その情報から導き出された結論が、「創業しようとする起業家について、創業しようとする事業の業務経験がない、若しくは少ない場合には、失敗する確率がかなり高い。」という実態です。

確かに「今まで自分がやってきたビジネスを、創業してそのままするのが一番成功率はが高い」というのは納得するところ。

ですので、創業しようとする業種の経験がない方が創業融資に申し込んだとしても、審査は厳しく見られてしまいます。

では、どれくらいの経験があれば良いのでしょうか。

政策公庫の創業融資の申し込みには、一定以上の自己資金が必要な「自己資金要件」というのがあるのですが、自己資金がない場合でも特別に認める「自己資金の要件を満たすものとする要件」があります。

そこには、「現在の企業に継続して6年以上」「現在の企業と同じ業種に通算して6年以上」との記載があります。

つまり、理想としては6年ぐらいあれば望ましい、といったところになるでしょうか。

店長経験や責任者経験があれば、それより多少短くても問題ないでしょうが、少なくとも正社員として3年程度の経験があったほうがいいように思います。

短い期間を働いただけでは、業務内容を覚えることだけで精一杯になります。

業界やライバル店、顧客の動向まで把握できるようなるのはとても難しく、創業者として事業を運営していくのには、経験がまだまだ浅いと考えられます。

3年間同じ仕事について、初めて事業の総合的な部分まで理解が出来るようになるのではないでしょうか。

よくある事例なのですが、

会社員の方が、給料をコツコツと貯めて、「前々から夢だった喫茶店を作りたい」と言って、創業融資に申し込まれるものの、そのほとんどが審査に通りません。

経験が不足しているということが審査の結果にも如実に現れているのだと思います。

ただし、経験不足であっても、他の部分が優れていれば審査に通ることがあります。

このような事例もあります。

あるサラリーマンの方が「スポーツバーを開きたい」といって、相談に来られました。

自己資金として1000万円以上を貯めていて、準備は万全でした。
しかし、飲食業についての経験が全くなく、その点だけが問題になると考えられていました。

ところが彼は、それを補ってあまりあるような綿密な創業計画を作っていました。

事業経験はありませんでしたが、調査や業界研究を徹底的に行っていたため、なまじの経験者以上の知識やノウハウを持っていることが伺えました。

そして、調理に関しては母親が手伝ってくれることになったので、調理経験のなさもカバーすることができたのです。

その結果として、無事に1500万円の融資がとおったのです。

「豊富な自己資金」や「一緒に働いてくれる経験のある家族」、「緻密な事業計画」を準備してきたことで可能となったことですが、このように事業経験が少なくても創業融資を受けられることはあります。