【令和5年分】役員貸付金があると融資が否決される?利息の引き下げと合わせてご紹介


令和4年・5年から役員・従業員への貸付金に対する利息が下がったようです。

役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息について

役員又は使用人に金銭を貸し付けた場合、その利息相当額は、次に掲げる利率によります。(1)会社が他から借り入れて貸し付けた場合・・・・・・その借入金の利率
(2)その他の場合・・・・・・貸付けを行った日の属する年に応じた次に掲げる利率

  • 平成22年から25年中に貸付けを行ったもの・・・・・・4.3%
  • 平成26年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・・・・1.9%
  • 平成27年から28年中に貸付けを行ったもの・・・・・・1.8%
  • 平成29年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・・・・1.7%
  • 平成30年~令和2年中に貸付けを行ったもの ・・・・・1.6%
  • 令和3年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・・・・・1.0%
  • 令和4年から5年中に貸付けを行ったもの・・・・・・・0.9%
国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」より

令和2年までは、役員・従業員への貸付金に対して利息を1.6%を取らなければならなかったものが、0.9%で良くなりました。

マイナス金利の影響で、市中の利率が下がってきていますので、実勢に合わせる形になってきたのでしょう。

さて、これ自体はいいことなのですが、従業員への福利厚生目的などで貸しているものを除いて、役員への貸付金は本来あってはならないもの。

役員貸付金はデメリットだらけで、いいことは一つもありません。

では、役員貸付金があるとどのようなデメリットがあるのでしょうか。

銀行からの心象が非常に悪くなります。

役員貸付金が生じる原因としては、大きく3つあります。

・社長が会社の預金からお金を引き出し、私的流用している。・領収書を紛失したり管理が出来ておらず、経費精算が出来ていない。

・利益を多く見せようとするため、会社の経費の一部を消そうとしている。

そのため金融機関から見ると、会社のお金を、遊興費などの社長の個人的な支出や資産の購入に使われているのではないか、あるいは、個人借金の返済に回されているのではないか、といった印象を抱かせてしまいます。

また、経費がきちんと計上されておらず、粉飾の疑いを持たれて、決算書の数字に疑念を抱かせることにもなってしまいます。

・金融機関の貸したお金が使途不明金になってしまっている。
・会社を経由した社長への迂回融資になってしまっている。

これらは、金融機関にとっては悪質なものとして扱われ心象は非常に悪くなります。

それに大事な資金が事業のために使われているわけではないので、今後の返済可能性に疑問がつくことにもなります。

そのため、決算の内訳書などに社長に対する多額の貸付金がある場合、金融機関は必ず確認をとります。

「どういう理由で貸しているのか、返済見込みはどうなっているのか」と。

きちんと金銭消費貸借契約を作って、返済が予定どおり進んでいるのであれば問題ないのですが、数年に渡って残高が残っていれば、返済する意思がないのではないかと思われてしまいます。

金融機関からこのような判断を受けた場合、今後、融資を借りることは非常に厳しくなりますし、最悪の場合は、返済を求めれることにもなりかねません。

税務署からの心象も非常に悪い

役員貸付金があると、社長の金銭管理が出来ていない、経理処理がどんぶり勘定になっているのではないかと税務署からも思われてしまいます。

経理処理がずさんで適正な税務申告が出来ていない場合、課税もれがあるのではないか、あるいは、経費の中に私的な費用が含まれているのでないか、と勘繰られこともあります。

脱税志向なのではないかとあらぬ疑いを受けることにもなって、税務調査のターゲットにされることも考えられます。

また最悪のケースですが、役員貸付金の返済の意思が無いと見られてしまうと、会社から社長への贈与になり、役員賞与として大きな税金が課せれらてしまいます。

その他にもデメリットが

社長に万が一のことがあった場合、負の相続財産として相続人に引き継がれてしまいます。

相続人と次代の会社経営者が同じ人間であればさほど問題が起こらないでしょうが、例えば親族で分かれてしまった場合、最悪の場合、相続人同士や経営者との間でもめ事になってしまうことも考えられます。

その他にも社長から返済されることがなければ、貸付金が増えれば増えるほど、会社のお金がどんどん減っていくことになり、財務内容が悪化していきます。

さらに、貸付金に対しては利息を計上しなければなりません。

通常、他人同士の取引ではお金を貸すのに利息を付けないことはありません。

受取利息を計上しておかないと、社長へただでお金を上げているとみなされて、税金が課税されることになります。

前述のように令和3年分から利率が下がったとはいえ、ただでさえ解消しにくい貸付金がさらに増え、その利息に対しても税金が課税されることになっています。

まとめ

このように、役員貸付金については非常にデメリットが多く、まさに「百害あって一利なし」となっています。

安易に会社の預金から引き出すことは考えものです。
経費精算もきっちりして役員貸付金が出ないような経営体制を敷かねばなりません。

一度生じた役員貸付金ですが、減らすのには困難が伴います。

会社と社長のお金を混同しないような仕組みつくりを検討し、経理体制を改善していく必要があります。

貸付金の解消には、役員報酬からの返済や退職金との相殺、社長の持ち家などの資産を会社に入れる方法などがありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

貸付金は大きくなると一度に簡単に消せるようなものでありません。
顧問税理士と相談し、早めに計画を立てて対策を行いましょう。