法人の決算対策:賢く税金を軽くする8つの方法
株式会社などの法人については、事業年度ごとに毎回決算を行って利益を計算し、税務署に確定申告をして法人税などの税金を納めなければなりません。
利益が大きくなると税金も大きくなります。
利益が出ること自体は良いことなのですが、そのまま決算を迎えてしまい想定外の多額の税金を払わなければならなくなって焦ってしまうこともあるでしょう。
そうならないようためには事前にさまざまな節税対策を活用して、税金を少なくすることを検討してみては
いかがでしょうか。
ここではそんな節税対策をご紹介します。
1.生命保険を活用する
法人で生命保険に加入して、保険料を経費として計上する方法です。
これまでは支払った保険料の全額が経費として認められる全損保険と呼ばれる保険がありましたが令和元年に国税庁の通達が改正されたことによって無くなり、経費へ計上することが難しくなりました。
しかし、支払った保険料の半分を経費として計上できる半損保険(ハーフタックス)と呼ばれる保険はまだ残っていますので、こちらを活用することが出来ます。
たとえ決算間近であっても1年分の保険料を払えば、多くを経費として計上することができます。
注意点としては、役員だけでなく従業員の大部分も加入しなければならず、加入始めの返戻率が悪い時に中途解約してしまうと解約返戻金が減ってしまうことあります。
また、毎年資金が出ていってしまうことになるので、資金繰りが悪くなってしまうことにも注意が必要です。
現在は退職金の積み立てについては経費への参入は認められていません。
そこで法人向けの生命保険は、社員の退職や死亡に合わせて資金を積み立てつつ経費に計上出来るようになっていますので、その目的に合わせてシミュレーションするとよいでしょう。
2.未払の費用を計上する
決算日までにサービスを受けていたり、使い始めている備品などは支払いが翌月になっても未払金として経費に計上することが出来ます。
例えば修繕費やETCの利用、消耗品費や通信費などが挙げられます。
その中でも、効果が大きいのものをご紹介します。
・給料を未払計上する。
末日締めの翌月払いの給料であれば、もちろん1ヵ月分の全額が未払計上となりますが、例えば20日締めの末日払いの場合だと、21日~月末の分については翌月に支給する給料に含まれていることになります。決算ではその部分を取り出して日割りで計上することが認められています。
・社会保険料を未払計上する。
社会保険料の納付は一月遅れとなっていて、例えば3月分の社会保険料は4月末に納めることになっています。
決算月の末日に在籍している社員の分については、翌月末に納付する義務が確定していますので、従業員負担分を除いた金額を経費として入れることが出来ます。
・広告宣伝費を未払計上する。
自社の製品や社名を消費者・得意先にアピールするため、広告宣伝として新聞の折り込みチラシからWEB広告、ダイレクトメールの送付や社名入りカレンダー・手帳の配布、それに雑誌・新聞の広告掲載などがあります。
広告宣伝の費用は、掲載期間の開始の日から経費として認められますので、支払いが終わっていなくても経費となります。将来の売上を獲得するための投資として、費用を使うのも効果的と考えられます。
ただし、チラシやカレンダーなどは配布していないと在庫として経費に入れることが出来ませんしのでご注意くださいね。
・固定資産税
毎年4月ごろに通知が送付されてくる固定資産税ですが、こちらも納付が終わっていなくても 決算日までに通知書が届いていれば、未払として1年分を経費として計上することが出来ます。
3.役員報酬を計算する
役員報酬については、一般の従業員と違って経費の参入には大きな制限が付けられています。
なぜなら役員報酬を自由に決められるようにしてしまうと、決算間際で利益操作が簡単に出来るようになってしまうからです。
そのため、役員報酬の改定は期首から3カ月以内と決められており、会計期間の途中で増減することは出来ません。これは「定期同額給与」といって毎月同じ金額を支給しなければ経費として認めてもらえないように
なっています。
また、役員賞与についても「事前確定届出給与」といって、あらかじめ税務署に、誰に何日にいくら払うのか
といった内容を届け出なければ経費として計上出来ないようになっています。
そのため、事業年度が始まったら次の決算の利益を見込んで、どれくらいの役員報酬にすれば節税効果が高いのかを、あらかじめ先にシュミレーションすると効果的な節税が出来るでしょう。
4.短期前払費用の特例により費用を一括前払いする
前払費用とは、一定の契約に従って継続して役務の提供を受ける場合において、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいいます。
つまり翌期に提供を受ける一定のサービスについて決算日までに先払いしたものをいい、具体的には翌期の家賃や保険料などです。
本来支払った時点ではまだサービスを受けていないので、先払いをしたとしても会計の期間損益計算の考えかたではまだ経費として計上出来ません。
短期前払費用の特例とは、これを簡便的な方法として一定のものについては、経費として認めるというものです。
適用できる費用としては、家賃、地代、リース料、借入の支払利息、生命保険料、損害保険料などがあります。
この特例を適用しようとする場合、契約が1年以内だったり毎期継続適用が必要だったりと条件があるので注意が必要ですが、資金に余裕があれば一括前払いで節税を検討してみてください。
5.法人で社宅を契約する
借り上げ社宅とは、アパートやマンションなどの賃貸物件を会社が契約して家賃を払い、社員に貸し付けて住居として利用してもらうものになります。
支払った家賃が経費として計上出来るので、社員が個人として家賃を払うことよりも節税効果が大きく、また受けとる社員のほうも住宅手当などの給与として受け取るより税金や社会保険料がかからずに手取りが多く残るという両方にメリットがあります。
社長が賃貸住宅に住んでいる場合で、法人契約が可能であればメリットが大きいですので、是非検討してみてはいかがでしょうか。
また従業員に対しても福利厚生として社宅を提供することで喜ばれることになり、人材採用や定着にも有効です。
ただし、無償で貸すのではなく、ある一定の金額を家賃負担金として社員からも徴収しなければ税金がかかりますので要注意です。
6.旅費規程を作成して日当を支給する
大手の会社では旅費規程を作成して日当を支給している会社もあるのでないでしょうか。
日当には出張先の食事代や身の回り品の代金を立て替えするためであったり、遠方出張に対する慰労の意味合いがあったりします。
本来、出張にかかった経費については領収書などをもって実費精算することが原則なのですが、すべての出張費用を精算するとなると膨大な手間がかかることから概算で固定費を日当として支給しており、実費精算をしなくてもよいものとなっています。
税金計算においても事務処理の手間を考えて実費精算でなくても差し支えないということを税務署も認めています。
日当については、法人の経費になることはもちろんなのですが、受け取った側でも非課税で受け取れるというメリットがあります。
そのため、単純に給料に手当としてもらうことに比べて税金面でも社会保険面でも負担を減らすことができ手取り額が増えるということになります。
また、消費税も課税仕入れという形になって減少するようになります。
日当を支給して税務署に認めてもらうためには、旅費規程の作成や出張報告書の作成が必要になりますし、金額も社会通念上の常識の範囲内となっています。
7.不良在庫を処分する
決算期末に保有している在庫は、決算の時に売上原価を計算する上で重要な要素となっています。
その期末在庫ですが、不良在庫や棚ざらしになっているような商品があれば、見直しを行うのも一つの手です。
期末在庫の価額は基本的には、購入した時のそのままの値段になっていることが多く、災害により損傷を受けたものや、季節商品・型落ち品で売れないものは評価損を出して在庫金額を減らすことも節税対策として有効です。
評価損を出せないような商品であっても、通常の値段で売れないようなものは在庫セールでしたり買取業者に売ったり、あるいは廃棄処分やせっかく購入した商品なのだから在庫にもまだ価値があると思い込んでしまうことがありますが、在庫管理にも手間がかかりますし、在庫金額が大きいのは決算書上も見栄えがよくありません。
早めに処分をすることで損失を損失を出してしまって、税金負担を軽くすることを考えた方が良いでしょう。
8.「経営セーフティ共済」に加入する
政府系の独立行政法人 中小機構が運用する経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。
政府の政策として加入が促進されていることもあり、加入にはたくさんのメリットがあります。
ポイント1
毎月の掛金は、経費として計上が可能。さらに1年以内の前納掛金についても支払い時に経費計上が可能。
1年間で最大20万円×24の480万円が経費として計上することが出来ます。
ポイント2
共済金の借入れは、無担保・無保証人で受けられます。共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。
ポイント3
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、途中でも増額・減額ができます。資金繰りを見ながら無理のない範囲で積み立てが出来ます。
ポイント4
共済契約を解約した場合の解約手当金は、自己都合の解約であっても掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなります)。
つまり、40か月以上納めれば満額戻ってくるので、定期預金を積み立ているような状態になります。
加入出来るのは一定の中小企業に限れられていますが、連鎖倒産に備えてもしもの時の保険にもなります。
また、掛金月額の変更や解約時期を任意にできるなど、使い勝手のよい制度となっており、税金の優遇措置としても優れています。
注意点は掛金の積立は最大800万円までとなっています。
また、解約して手当金を受け取ったときは収入となって税金がかかります。
加入資格は、継続して1年以上事業を行っている中小企業者となっていますので、創業してすぐは加入できません。
また、12ヵ月未満で解約するとは掛け捨てとなって解約手当金はありません。
まとめ
ここまで、法人の代表的な節税方法をご紹介してきました。
税金対策、節税の方法はいろいろありますが、決算間際に慌てて行うのでは時間もお金も無駄になって逆効果になってしまうことがあります。
誰しもが税金は払いたくないと思いますが、事業を続けていくうえでは税金を払った方が結果的にお金が残ることもあります。
あらかじめ時間をかけて中期・長期計画で会社の将来を考えていくことが大切ですので、未来に向けて有意義なものとなるよう検討してみてください。