民間の金融機関を新しく開拓するための3ステップ取引術
中小企業には、融資を受けている金融機関が日本政策金融公庫だけという会社が多く存在します。
一番多いパターンは、創業の時に政策公庫から創業融資を借りて、そのまま追加融資や借り換えを行っているケースではないでしょうか。
政策公庫から融資を受けた後、順調に売上を伸ばしている場合や返済が進んでいる場合は、あらためて公庫から融資を借りることはそんなに難しくないでしょう。
しかし、売上が伸びず、返済が進む前に資金が不足してきた場合はどうでしょうか。
原則的に政策公庫では、借入の半分を返済しないと借り換えには応じてくれません。
期待していた政策公庫に融資を断られてしまって、あわてて他の金融機関に走ってみても、いきなり訪ねてきた人にすぐに融資をしてくれる金融機関はまずありません。
そんなことにならないためにも、あらかじめ政策公庫以外にも取引ができる民間の金融機関を開拓しておく必要があるのです。
でも金融機関を増やすといっても、どうすればいいのかわからない、とおっしゃる方は少なくありません。
取引する金融機関を増やすためには、ちゃんとした手順が必要です。
そのためには半年ほどの期間が必要ですが、しかし、半年あれば開拓出来ます。
ここでは、そんな金融機関の開拓の手順を、わかりやすく3ステップにまとめてご紹介します。
新たな金融機関を開拓するための3ステップ取引術
金融機関を訪問する
融資を受けたいと考えている時期の半年ほど前までに、新たに取引したい金融機関へ訪問します。
新たに開拓する場合は、会社近くの地域密着型の金融機関のが良いです。
※地域密着型の金融機関については、ココで解説しています。
ここで訪問した時に、いきなり「貸してください」はNGです。
あたな自身で考えてみてください。
よっぼど経営成績や財務内容が良ければ別でしょうが、いきなりやってきた見ず知らずの人間に貸すような人はいないでしょう。
まずは関係づくりが大事になります。
金融機関の支店の窓口を訪れて、融資の担当者との応答になります。
なぜその金融機関の、その支店を選んだのかのを説明する。
担当者が最初に疑問に思うことは、何故、この支店に来たのか、を疑問に思っていることです。
疑問を抱えたままでは、、担当者も話を素直に聞いてくれないので、疑問を解決するところから始まります。
簡単に自己紹介をした後、次の3点を答えてください。
- 現在、金融機関は政策公庫としか取引がなくて、とてもリスクを感じていること。
- 民間の金融機関とも取引しておいたほうが良いと考えていること。
- 民間の中でも、会社近くの地元の地域密着型の金融機関であれば、地域に根ざした信頼関係があって、面倒見がよさそうなこと。
「そのため、こちらの支店を訪問させていただきました」と答えて、まずは担当者の疑問を解消します。
続けて次の提案をしてください。
- 半年先に新たな投資を考えていて、融資を受けたいこと。
- 決算書や事業計画書を提出すること。
- 毎月、試算表を提出し、業績報告に訪問すること
そして、最後にこう述べてください。
「6ヵ月後になりますが、融資することを検討していただくことは可能でしょうか。」
融資をして欲しいといえば断られますが、検討するだけであれば銀行にとっても何のデメリットもないので、これを断ることは少ないでしょう。
そうすれば、その支店も営業の担当者を決めて、後日会社へ訪問してくれるようになります。
事業計画書を作成する
金融機関との信頼関係づくりの第一歩として、会社の内容を知ってもらわなければなりません。
決算書からは、過去の業績な内容などはわかりますが、その会社のビジネスモデルや資金の流れ、主力商品の内容などはわかりません。
そこで事業計画書を作成しておきます。
担当者が訪れた際には、この事業計画書と3期分の決算書、それに会社パンフレットなどを一緒に渡してください。
ここで、いつ融資を必要としそうなのか、どのくらいの金額が必要になりそうなのかも一緒に伝えておくと良いでしょう。
関係づくりが上手くいけば、融資が必要となりそうな時期に金融機関から声をかけてくれるようになります。
毎月の試算表の作成し、業績報告へ訪問する
金融機関が融資を審査するのに、必要とする情報は2つあります。
・1つ目は、会社の将来性や潜在能力を図るための、ストック情報。
・2つ目は、会社の現状を表す、フロー情報。
ストック情報は、事業計画書を提出することで、金融機関に伝わっています。
もう一つのフロー情報は、毎月の試算表の提出と業績報告で、伝えることが出来ます。
毎月の試算表の動きを並べて見ることで、キャッシュフローやビジネスの流れを掴み、会社の現在の状況がわかります。
これらの資料のほかに、現在の経営環境、最新の経営状況、今後の経営戦略などを詳細に伝えましょう。
毎月の試算表を作って、業績報告が出来るということは、経理体制がしっかりしていることを表しています。
金融機関も毎月の業績報告を受ける中で、社長自身が経営に必要な数字を把握出来ているかどうか、それに人柄や人間性を確かめることが出来ますので、これを半年も続ければ信頼関係が出来上がってくるでしょう。
その他にも金融機関が喜んでおくここをしましょう
信頼関係づくりには、先に金融機関が喜んでもらうことを行っておくことも効果的です。
定期預金や定期積立を行っておくことも喜ばれます。
余裕があれば手数料の高い保険や投資信託を購入するのもありですが、あまり無理する必要はありません。
まとめ
政策公庫としか融資の取引をしていない会社が、新たに民間の金融機関を開拓する手順を紹介しました。
ここで紹介した3ステップ、
- 金融機関を訪問する
- 事業計画書を作成する
- 毎月の試算表の作成し、業績報告へ訪問する
を進めて、上手に信頼関係を構築することが出来れば、やがて担当者から、
「当初にお話しいただいた、融資の件についてですが」と話を切り出してくれます。
そうなれば、新たな金融機関の開拓は完了です。
すぐに融資が必要でないときは、新たな金融機関の開拓といっても腰が重くなってしまうかもしれません。
しかし、政策公庫とだけしか融資取引がない状態は、非常にリスクの高いといえます。
いざ資金が必要となってあわてても、そんな状態のときでは融資は借りれません。
資金に余裕があるときにこそ、前もって行動しておいたほうが良いでしょう。
こちらで紹介した手順を利用して、是非、新たな金融機関を開拓しておくことが、会社の永続のための一歩ともなります。